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卓球指導における「褒める」ことの大切さ。〜選手が伸びないと悩んでいるあなたへ〜

更新日:2021年5月17日

ただ叱るだけの指導が陥ってしまう「負のループ」

 

スポーツ選手は、指導者からいつも厳しく指導されていると言うイメージがあるかと思います。確かに選手たちは、勝負の世界で戦っているので、常に結果を残さないといけません。そのためには、試合の厳しい環境に耐えられる心と体が必要です。

その心と体を手に入れるためには、普段の練習の時に、試合以上のプレッシャーをその両方にかける必要があります。


確かに体に関しては、普段から試合以上に体力を消耗するようなトレーニングを行うことで、試合の時緊張した状態でも、スタミナ切れになりにくくなります。

ただ心に関しては、ただただプレッシャーをかけるだけではうまくいかなくなる時があります。例えば、大事な局面で負けてしまった時、それを叱り付けてしまうと選手は自信がなくなり、トラウマになってしまいます。そうするとまた大事な局面に差し掛かった時前回の失敗が蘇り、また負ける、また叱られるという「負のループ」が発生します。


では、そんなトラウマがある状態の選手を「負のループ」から抜け出させる、そもそもそのようなループに陥らないようにするにはどうすればいいのでしょうか?



「失敗が怖い」から「もう一度成功したい」へ

 

答えは、その選手を肯定してあげることです。そうすることで、前述した負のループを回避できるだけでなく、生徒が自力で成長できるループを作ってあげることができます。

具体的には①いい部分を褒める→②足りない部分を指摘する→③解決方法を示すという方法で指導していきます。ミスをしてもその中には必ず正しかった部分もあります。なので正しかった部分に関しては「ここはよくできているね」と褒めてあげた上で、「ここはもう少しこうするともっとよくなるよ」といった指摘を行います。例えば、「打球点はよかったけど、面をもう少し立てたらオーバーしなかったね」というようなアドバイスです。


このような「褒めて伸ばす指導」が生徒の自主的な成長において効果的である理由が3つあります。


1. 改善する箇所がピンポイントでわかるので、改善までの時間が短縮できる。

このようなアドバイスをすることで、選手は自分の改善すべき点がピンポイントでわかるので、そこを集中して練習することができ、結果改善までの時間が短くて済みます。また、元々よかった技術を変に変えてしまって、逆にうまく行かなくなることも防ぐことができます。


2. 否定される恐れがないのでコーチのアドバイスを受け入れ易くなる。

誰しも、自分の欠点を指摘されるのには抵抗があります。指摘されるだけでも抵抗があるのに否定(強く叱られる)されて前向きになれる人はほとんどいないと言えます。しかし先に褒めてあげることは、生徒が指摘を受け入れる際の土台作りに繋がります。「今のままでもフォアとドライブはできている。あとバックを改善すればもっとうまくなれるんだ!」という具合に改善することが、「マイナスを0に近づける」行為ではなく「プラスをさらに増やす」行為であることを生徒に伝え、指導者のアドバイスも後者を促進するものであること生徒に伝えるためには「褒めて伸ばす」指導が最適なのです。


3. 自信がつくのでメンタルが安定する

指導者は選手が成長することが目的なので、選手がやる気のある状態を常に保っていることが大事です。「ここができてないのはわかる。でもこんなに一所懸命頑張っているのに、否定ばかりされていると、やる気が失せてしまう…」スポーツに限らず、会社などでも起こりうることですよね。でも、生徒がこうなってしまっては、指導者は生徒を成長へと導くことができません。それどころか、モチベーションを奪ってしまいます。そうではなく、常に自信とやる気を持たせ、前進する勇気とモチベーションを与えるのが指導者の役割なのではないでしょうか。



実際に2010年にUCLA神経リハビリテーション科のブルース・ドブキン教授らがアメリカや日本など7カ国で行った国際研究によると、脳卒中の患者さん179人を調べた結果、歩くリハビリをする際に「ほめられた」患者さんは、「ほめられなかった」患者さんより、歩くスピードが大幅に速くなることがわかったのです。この研究では、褒められることで脳の「報酬系」がドーパミン(快楽物質)によって活性化され、その後は報酬系自体がドーパミンを得やすいような構造に変化していったことが判明しました。つまり一度成功を認められ、その成功の快感を体験した人の脳は次第に「どうしたら成功してあの快感を味わえるだろう」という成功を求める思考回路に切り替わるということです。


選手が自分で考えて成長できるように導く

 

選手は始めから色々な技術ができるわけでも、自分で改善点に気づいて練習できるわけでもありません。当然我々指導者の指導が必要です。ただ、指導といっても必ず全部叱らなければならないわけではないと思います。前述の通りいつも叱られていると、自信をなくしてしまいます。卓球選手は試合で苦しい局面に差し掛かった時、自力で乗り越えなくてはいけません。その時に自分を信じることができなかったら、力も発揮できないのです。だからこそ生徒が自ら考えてレベルアップしていくことが必要で、そのために指導者は褒めて自信をつけながら、技術的な改善点をアドバイスすることが大切です。


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​投稿者プロフィール

​鄭 慧萍

HP「鄭 慧萍 [日本名:高林慧]」.jpg

元中国代表・ニッタク契約コーチ

 

大正大学卓球部コーチを経験しインカレ優勝、関東学生リーグ一部優勝、全日本選手権女子シングルス準優勝​に導く。

その後アテネ五輪予選、北京五輪、世界選手権横浜大会​において福原愛を指導。

現在はTTC浦和ニッタク本社、関東地方でも精力的な講習会活動を行う。

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